アジア各国の学生と共創する
「ACEプログラム」第2期生 成果報告会レポート

国際化推進機構

2025/04/07

RIKKYO GLOBAL

OVERVIEW

立教大学の国際化戦略の一環として2021年度からスタートした「ACEプログラム※」。ソウル大学校、北京大学、シンガポール国立大学の3大学と連携し、リベラルアーツ教育を基礎としつつ、現代のアジアや国際社会の諸課題について思考し、行動できる人材を育成することを目的としています。同プログラムでは、複数の提携大学へのセメスター交換留学や共同オンライン科目、短期のインテンシブプログラム、参加者同士の国際文化交流などを柱としています。2025年2月1日、プログラムを修了した第2期生3名による成果報告会を池袋キャンパスで実施しました。その内容をご紹介します。

※ACEプログラム:「リベラルアーツ教育」を共同テーマとした大学間国際コンソーシアム「The Asian Consortium for Excellence in Liberal Arts and Interdisciplinary Education(The ACE)」の中核を担うプログラムの総称。2021年度文部科学省「大学の世界展開力強化事業~アジア高等教育共同体形成促進」に採択。
成果報告会には、西原廉太総長、松井秀征国際化推進機構長、参加学部の教員、事務局スタッフなどが参加し、第2期生3名の発表に耳を傾けました。まず開催にあたって西原総長からあいさつがありました。

「立教大学は韓国、中国、シンガポールのトップ大学のパートナーとして選ばれています。皆さんがACEプログラムの第2期生として素晴らしいご活躍をなさったおかげで、文部科学省に対して実施された令和6年度行政事業レビューにおいて特徴的好事例として紹介されました。約2万人の立教大学の学生の先導役として、これからもさまざまな発信をしていただければと思います。大学卒業されて社会に旅立たれる際も、ACEで経験されたことは、一生の宝物になるはずです」

続いて第2期生3名の成果報告があり、それぞれの発表後、教員からの講評が行われました。

第2期生からの報告

報告は主に5項目について行われました。①ACEプログラムにおける学修・学生交流の総括 ②6つのコアスキルに関する「ACE Common Rubric」を用いた自己評価 ③リベラルアーツへの理解 ④プログラム修了後のキャリア目標 ⑤その他、特筆したいこと。

※ACE Common Rubric:ACEプログラムが設定する、Cではじまる6つのコアスキル(Critical Thinking, Collaboration, Communication, Consilience, Challenge, Cosmopolitan)に基づく評価指標。

星 かえで GLAP3年次

私はACEプログラムで、ソウル大学校とシンガポール国立大学へのセメスター留学、立教大学でのサマーインテンシブプログラム、北京大学開講のオンライン科目の受講を経験しました。

ソウル大学校では、同じ韓国人でも、韓国で生まれ育った人、韓国に生まれて他国で育ち2つの文化を経験した人など、さまざまな背景を持つ学生が共に学んでいました。そういった学生から新たな視点や気付きを得ることが多く、刺激を受けました。学修面では、英語という言語への関わり方が変化したと感じます。英語を社会的、文化的、音声学的な側面から学ぶ機会があり、知的好奇心をくすぐられました。

シンガポール国立大学では、共に学ぶ学生の「疑いを持つ力」や「受け入れる力」に刺激を受けました。同じ課題に対して、私と全く異なる視点や疑問を持っていて、彼らの視野の広さを実感しました。ディスカッションでも他者の意見をオープンマインドに受け入れる、受け入れるためにより深い質問をするといった姿が印象的でした。

続いてACE Common Rubricの自己評価です。「Collaboration」の点で、異なる文化的背景を持つ学生と協働する機会があり、意思疎通がうまくいかないこともありました。その度に「私はこの状況でどのように貢献できるのか」と考え、仮説と検証を繰り返したことで、自分のリーダーシップや強みを理解できました。

今後のキャリアビジョンについて、いつの時代も代替の効かない人材になりたいという思いがあります。ACEプログラムを通して、この世界は不確実な要素が多く、先が見えないということを改めて認識しました。そうした世界を生き抜くためには、1つの専門性にとらわれず、複数の専門性を融合していく必要があると感じます。ACEプログラム参加前は、リベラルアーツとは個人がさまざまな知識を身に付け、個人の中で統合するものという印象を抱いていました。しかし参加後は、個人同士が互いの知識や専門性を組み合わせていくことがリベラルアーツに求められていると感じました。それを実現する上で、ACE Common Rubricのスキルは重要だと感じたので、今後も常に6つのスキル向上を意識していきたいと思います。

阿部 裕華 異文化コミュニケーション学部3年次

私は中国と日本にルーツを持ちますが、日本で育ったため中国語はほとんど話せませんでした。中国語をもっと学びたい、北京大学に留学してみたいといった思いがあり、ACEプログラムへの参加を決めました。

最初に留学したシンガポール国立大学では、学生の意欲の高さを実感しました。例えば、授業で先生が1つ質問すると学生たちが多数の意見を出し、議論が長時間続くことがありました。それまで私は自分から発言するのが得意ではなかったのですが、そうした学生の中で埋もれないよう積極的に発言するようになり、成長を実感しています。

北京大学では中国語の学習に力を入れ、自分の言語レベル以上の授業を履修しました。最初は先生に発言を求められても、意味が分からず何も話せないことが度々ありました。それでも、授業の録画を低倍速で再生して復習したり、数少ない友人に付き合ってもらいアウトプットを繰り返したりといった努力を継続しました。その甲斐あって、帰国後のサマーインテンシブプログラムでは、留学で身に付けた中国語力を生かしてチームに貢献できたと思います。

続いてリベラルアーツに対する解釈についてですが、シンガポール国立大学の「Global Narratives」という授業での出来事が印象的でした。ある物語について議論する際に、文系の学生は1つの単語に注目し、そこから考えていたのに対し、理系の学生は物語を数式化、図式化して分析していたのです。多様な人がそれぞれの専門性を持ち寄って考えることが、リベラルアーツのゴールであると実感しました。

ACE Common Rubricの自己評価では、特に「Cosmopolitan」の点で成長を実感しました。自分の文化と異なる言動になじめるようになったと思います。例えば、中国の店員は高圧的だという印象を私は持っていました。しかし、長く滞在していると、中国の店員は客を対等に見ていて、高圧的と思える態度には、ある種のフレンドリーさが出ているのだと思うようになったのです。自分が抱いていたステレオタイプや先入観がどんどん変化していくのが楽しかったです。

ACEプログラムを通して、多くの人と関わり、新たな視点に触れることが面白いと思えるようになりました。今後は、日本で社会人経験を積んだ後に、再度中国に留学して、日本と中国をつなぐ存在として、さらに成長していきたいです。

曽根 野乃花 GLAP4年次

私は2023年8月から12月までソウル大学校に、2024年1月から5月までシンガポール国立大学に留学しました。ACEプログラム参加にあたって、アジアの優秀な学生と切磋琢磨し、多角的な視点や国際感覚を養いたいという思いがありました。

ソウル大学校では主に人類学と言語学に関する科目を履修。印象に残っているのが、ある科目で、毎回授業後に提出するリアクションペーパーが全員に見られる形で掲示されていたことです。授業の感想にとどまらず、自分の考察も交えて長文で書いている学生が多く、やはりソウル大学校には優秀な学生が集まっているのだと実感しました。

シンガポール国立大学では人類学や社会学、政治学、ジェンダーに関する科目を履修しました。ここで体感したのが授業レベルの高さです。リーディングは理解している前提で「この観点で議論してください」といったインタラクティブな授業が多く、苦労しました。対策として、リーディングの不明点をあらかじめ調べて授業に臨む、議論のテーマになりそうな点をメモにまとめて自分の意見を考えておくといった準備を心掛けていました。

リベラルアーツとは、異なる分野を横断的に学び、多様な価値観や文化に触れることで社会を多角的に理解して、柔軟な思考力と多面的な視野を養う学問だと私は考えています。実際に、留学先でさまざまな授業を履修する中で、社会問題の構造や文化的背景、ジェンダー、政策的観点など多様な切り口から考える力が身に付いたと感じます。また、異文化交流を通じて、異なる価値観を受け入れる姿勢や、自分の考えを的確に伝える方法を学ぶことができました。

ACE Common Rubricの自己評価では、「Critical Thinking」「Challenge」「Cosmopolitan」の点で、特に成長を実感しました。今後のキャリア目標としては、複数の分野で専門性を高め、自分自身の市場価値を高め、世界で活躍できる人材になりたいと考えています。

ACEプログラムは、ハイレベルな学生と交流できるだけでなく、アジアという地域の多様性について考えられる絶好の機会です。例えば、日本と韓国のように地理的に近い国でも、文化、言語、考え方、宗教観は異なります。観光ではなく、そこに滞在する経験を通して、そうした違いを実感していただきたいと思っています。

修了証の授与

全員の報告に続いて、第2期生3名が共同制作したACEプログラムの動画を上映。その後、松井秀征国際化推進機構長から修了証の授与と閉会のあいさつがありました。

「皆さん本当にお疲れさまでした。ACEは、国として、大学として、皆さんに期待して進めているプログラムです。その中で、精一杯学び、期待に応えてくださって、今日の報告会があります。本プログラムは今後も継続していきたいと考えていますが、それは皆さんの今後の活躍にかかっています。つまり、このプログラムで学んだ皆さんが社会で活躍してくれた時に、『ACEって素晴らしいプログラムだったんだ』ということが改めて分かるのです。サポートしてくださった教職員の皆さんにもお礼申し上げます。本当にありがとうございました」

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