「若手起業家が語る!『起業』という選択」

株式会社Mobility Technologies代表取締役社長 中島宏さん、株式会社テーブルクロス 代表取締役CEO 城宝薫さん、株式会社タイミー 代表取締役 小川嶺さん

2021/10/15

立教卒業生のWork & Life

OVERVIEW

2021年7月13日、立教出身・在学中の若手経営者による座談会をオンラインで開催しました。
登壇者は、中島宏氏、城宝薫氏、小川嶺氏の3人。高岡美佳経営学部教授による司会で、視聴者からの事前質問も交え、多彩なテーマで語っていただきました。その一部をご紹介します。

特に質問の多かった「リスクのある『起業』をどうして選んだのか」ということについて聞かせてください。

(株)Mobility Technologies 代表取締役社長 中島 宏さん(平成14年理学部化学科卒業)/大学卒業後、経営コンサルティング会社を経て2004年にDeNAへ入社。20年、旧JapanTaxiとDeNAの配車アプリ「MOV」の事業統合で(株)Mobility Technologiesを立ち上げ、代表取締役社長に就任。タクシー配車アプリ『GO』をはじめ多彩なモビリティ関連事業を展開。「起業をもっとカジュアルに捉えてほしい」。

小川 実業家であった曽祖父の影響を受け、18歳で志しました。1社目の失敗を経て、スキマバイトアプリという人生を賭けて取り組みたい事業を立ち上げることができ、頑張っています。在学中に起業しましたが、就活も行いました。リスクヘッジをすることは大切で、起業以外の選択肢があると保護者の方も安心するのではないでしょうか。

城宝 大学3年次にアイデアが降ってきて、ビジネスパートナーが現れ、資金援助をしてくれる人も集まりました。一方で「就活しなくて大丈夫かな」、「失敗したら嫌だな」という心配もあり、起業を悩みました。そんな時、先輩から「城宝にとって失敗って何?」と問われ、よく考えたら借金を背負うわけでも、友人が離れるわけでもない。「城宝は失敗した」と周りから言われることだけが嫌なんだ、と気付かされた時に起業を決意しました。

中島 大学時代に起業したいという思いがあったものの、ビジョンやノウハウがなく修行のつもりで経営コンサルティング会社に入社しました。その後、時代が大きくインターネットに流れ、DeNAに転職。16年間勤務し、多くの貴重な経験を積ませていただく中で、タクシー配車アプリの事業を立ち上げました。その時、UberやDiDiといった国際的な大企業が参入し、自社の投資余力だけでは勝ち切れなくなり、外部から出資を募りました。その時の選択肢としてあったのは、DeNAの常務として残るか新会社の役員として出ていくのかという2つ。学生の頃から起業したくて、自分が立ち上げた事業でダイナミックな勝負が仕掛けられるのなら、迷いなく新しい会社に行こうと決めたのです。

お三方ともアプリに関連した事業をされていますが、アプリ開発などに対する専門的な技術を持たない学生がそうした事業を立ち上げるにはどうすればよいでしょうか?

(株)テーブルクロス 代表取締役CEO 城宝 薫さん(平成28年経済学部会計ファイナンス学科卒業)/途上国で見た子どもの貧困と、飲食店の広告費の課題を同時に解決するモバイルアプリ「テーブルクロス」を考案し、大学3年次の2014年に創業。18年より訪日外国人向けフードプラットフォーム 「byFood.com」を開始。EY主催 WWN2018受賞。Forbes under 30 ASIA2021受賞。「何があっても諦めなかったから今がある」。

中島 ビジネスコンテストやインターンシップなどに参加する学生の中には、「起業マインド」があって技術レベルも高い学生がいます。そこで相性の良い人に出会う可能性はあるので、そうしたコミュニティーにリーチするのが近道ではないでしょうか。格好つけずに周りにサポートを求めると、誰かは協力してくれるはずです。

城宝 Webサイト作成ツールや決済システムなど、提供されているサービスを利用するのも一案です。日本では高額なものもありますが、海外では同等のサービスが無料もしくは安価で提供されていることが多く、私も利用しています。解説を英語で読むのは大変ですが、専門的な技術がなくても使えるサービスがたくさんあると学びました。

小川 私は情報系の分野に強い他大学の学生と積極的に交流し、そこで出会ったメンバーと一緒に起業しました。また、IT・プログラミングの学習サービスを利用し、ある程度の技術を習得できました。そこでエンジニアの仲間を見つけるのもよいかもしれません。

お三方が考える「起業家に求められる資質」とは?

(株)タイミー 代表取締役 小川 嶺 (経営学部4年次)/大学2年次の2017年にアパレル関連事業を行う(株)Recolleを設立。2018年よりスキマバイトアプリ「Timee」を開始し、(株)タイミーに社名変更。「一人一人の時間を豊かに」というビジョンのもと、さまざまな業種・職種で手軽に働くことができるプラットフォームを目指している。「『世の中を良くしたい』が起業家の本質 」。

城宝 失敗しても諦めない「根性」が大切です。会社経営は、失敗やハプニングの連続です。私もオフィスが火災にあったり、人材や資金繰りの問題に見舞われたりと挫折しそうな場面は多々ありました。しかし、諦めなかったことで今の自分がある と思っています。

中島 「解決すべき課題を見つける能力」が1番重要ではないでしょうか。不便の少ない日本で生活していると、世の中の課題に気付くことはなおさら難しいと思います。まずは課題を見つけ、解決するためにどうすればよいのか周りに聞き続けることが大切です。

小川 3つあります。まずは「リスク・リターンを考える力」。「こうすれば、どうなる?」というシミュレーションを常に行いながら意思決定を下すことが大切です。次に「俯瞰的に見る力」。没頭すると視野が狭くなるので、俯瞰的な視点で世の中の大きな流れをつかむことは重要です。この2つは、私が3歳から行っている将棋から学びました。最後は「運」だと思います。運を分解すると「日々の出会いを大切にする」とか「いつも笑顔でいる」といった心掛けが幸運につながって、成功する確率が高まるのではないかと思っています。

事業を諦める、あるいは続けようと思うタイミングは?

司会進行を務めた、高岡美佳教授(経営学部)

小川 諦めるのは自分の信念がなくなったときですね。1社目は、アパレル業界で一生過ごすイメージが持てなくなり事業を畳みました。現在のタイミーを続けられているのは、このサービスが世の中を良くすることができると本気で思えたからです。

城宝 起業すると、諦めようと考えるタイミングは何度も来ると思います。しかし、続けようという気持ちさえあれば問題を解決できる手段はいくらでも出てきます。その選択肢が途絶えるのは、自分のモチベーションがなくなったとき。強い気持ちがある限り、壁は乗り越えられるのではないでしょうか。

中島 私、ものすごく諦めが悪いんですよ。これまでいくつもの事業を畳んでいますが、それは本当に続けられなくなったから。私は手段を尽くして続けようとするのだけど、周りから羽交い締めにされて強制終了させられるイメージです。ですので、自分から諦めようなどと思わなくてもよい気がします。

起業を志す若者へのメッセージをお願いします。

小川 「起業家の心」を持った人がもっと増えてほしいですね。「世の中をより良くしたい」という姿勢が起業家の本質だと思いますので、そういう目線を持った人が増えると日本はもっと成長していくのではないでしょうか。かつてNTTが世界1位の時価総額を達成しましたが、それを自分の会社で成し遂げたいと思っています。私もまだまだ成功したわけではないので、しっかりと背中で語れるくらい大きな人間になりたいです。

城宝 失敗はあくまで「経験」だと思っています。成功を収めている人は失敗もたくさんしている人が多いと思うので、失敗を恐れない空気が立教の中に広がればうれしいですね。私も事業を通して未来の日本によいものを残したいと思っています。志や思いを共有しながら、若者の起業を応援し、みんなで頑張っていく雰囲気ができたらいいなと願っています。

中島 起業をもっとカジュアルに捉えていいんじゃないかと思います。「何を成したいか」が重要で、何かを成そうと思ったら、高い確率で起業という手段が浮かび上がるはず。「ビジョンがない場合はどうすればよいか」という質問もよく寄せられますが、成すべきことが見つからない場合、視野が狭いだけということがほとんどです。多様な経験を積んだり、勤めている会社の中でポジションが上がったりすると、見渡せる範囲が広がり、その中で成すべきことが見つかる瞬間が来ます。ビジョンがなくても「焦らず視点を上げる」ことを心掛けてみてください。
(文/觜本 瞬 撮影/ 中西 祐介)

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